親孝行のための「家族信託」活用事例&実践ガイド

親孝行のための「家族信託」活用事例&実践ガイド

家族信託とは、大切な財産を家族に託す仕組みのこと。老後の財産管理や財産承継に有効な方法として注目されています。本サイトでは、実績ある司法書士の監修のもと、その活用方法やアドバイザー選びなどをお届けします。

監修者写真司法書士リーガル・パートナー
代表 堀内 貴敬

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家族信託活用事例事例から
お悩み解決

親が認知症になった場合の資産凍結リスク対策をはじめ、相続対策、財産継承、資産防衛など、「家族信託」を活用することで、様々な財産管理の悩みを解決できた事例を、相談実績で年間150件を超えるという「司法書士リーガル・パートナー」協力のもと紹介。空家になる実家の売却や、収益物件の運用管理、土地継承といった具体的なケース別に、ポイントを分かりやすく解説しています。

CASE 01

実家の売却をスムーズに行い、
介護施設費用に充てたい

不動産売却
相談者のアイコン

Aさん(83歳女性)

家族構成
5人家族弟、弟の妻と子供2人

資産の状況

相談者は、83歳の独身女性・Aさん。75歳の弟がおり、その家族と実家で同居しています。
実家(都内港区・一戸建て)の土地と建物を姉弟で共有している状態ですが、建物の老朽化が目立っていました。また自身の判断能力が衰えつつあり、自宅での生活に限界を感じていたため、これを売却し、介護施設に入所することを決意したそうです。
Aさんの資産は、実家の持分2分の1(相続税評価約5,000万円)と、同じく港区内の投資用ワンルーム(相続税評価約450万円)と若干の預貯金(100万円未満)。年金収入は、2ヶ月で約16万円です。
姉弟には、交流がない異母姉が2名いるため、何も対策をしないまま相続になった場合、遺産分割協議が難航することが予想されました。

相談内容

介護費用を
自分の財産から
捻出したい

Aさんは古い木造住宅での生活に限界を感じており「売却したうえで介護施設に入りたい」という希望を持っています。しかし、隣地との境界確定をはじめ、不動産の売却が長期化しかねない事情がいくつか重なっていました。そこで「不動産の売却に伴う手続きと、その売却金の管理を弟か弟の子供たちに任せたい」と考えています。
現預金が100万円以下であるのと、年金収入があまり多くはないため、介護施設に入所するために実家の売却は必須の状況です。
またAさんが他界した場合は、異母姉にも相続権が発生することを司法書士が伝えると「交流のない異母姉ではなく、自分の弟にすべての財産を引き継いでほしい」と希望したそうです。

司法書士・堀内先生が導いた解決方法

家族信託で円滑に不動産売却
快適な生活環境を実現

お姉様と弟様で、家族信託契約を締結しました。対象となる財産は、港区の実家持分とワンルームマンション、預金のうち30万円です。
目的は、財産の管理を弟様が行い、実家の売却を完了させて、お姉様の介護施設入居を実現し、快適な生活環境を整えることです。
ほとんどの資産を信託の対象としていますが、個人資産として若干の現金が残るため、公正証書遺言を作成し、弟様にすべて相続させることとしました。これにより、遺留分のない異母姉たちから法的な主張がされることはありません。
なお、弟様もすでに75歳とご高齢のため「受託者が77歳に達した時点で、二次受託者である甥(41歳)に引き継がれる」など、受託者の変更条件をあらかじめ設定しました。

監修協力の画像司法書士リーガル・パートナー
代表
 堀内貴敬
POINT
01

Aさんの実家の持ち分を信託財産に含め、委託者を弟に指定したので、この先、Aさんの認知症が進んだとしても、不動産売却は弟一人で完了することができます。事前にこのような対策を行っておかないと、認知症になった場合に「本人に判断能力がない」とみなされ、一切の不動産取引が行えなくなります。売却金がなければ、Aさんも介護施設へ入居できません。

POINT
02

不動産売却によって発生した利益は「委託者の利益のために運用管理する」のが、家族信託の基本ルールです。このケースの場合は、実家の売却で得た収入も弟が管理してくれるので、Aさんは施設への入居後、費用について心配したり、頭を悩ませたりする必要がなくなりました。

POINT
03

「血は繋がっているが、交流のない人物がいる」と、遺産相続の際に好ましくないトラブルが発生することがあります。信託財産の帰属権利者を弟に決めたことにより、異母姉たちに関与されない資産の承継が可能となりました。依頼者の心理的な負担を軽減するために、有効な方法です。

司法書士リーガル・パートナー代表 堀内先生の想い

監修協力のサムネイル画像短期的には「スムーズな不動産売却のため」、長期的には「おひとり様であるお姉様の生活を支えるため」の方法を検討した結果、家族信託が最適であると判断され、当事務所に相談してくださいました。
お姉様は弟家族のためを想い、住み慣れた実家の売却を決意しました。弟様のご家族も全面的に支援し、家族信託や遺言を共に考えていく姿勢をお持ちでした。何度かお会いし、真剣に話し合いをされている姿を見ていると、こちらもご家族の強い絆を感じることができました。お手伝いができて、本当に良かったです。

CASE 02

家族信託を公正に進め、
父の財産を管理したい

アパマン経営
相談者のアイコン

Bさん(90歳男性)

家族構成
4人家族息子3人

資産の状況

相談者は、都内在住のBさん(90)とその次男(61)。Bさんの妻は2年前に他界しています。また次男以外にも、長男と三男がいます。
資産は都内の自宅(相続税評価約4,000万円)と、同じ敷地内にある木造アパート(相続税評価約3,000万円)、そして杉並区にある木造アパート(相続税評価約4,200万円)と現預金(約1億円)・有価証券(2億円)です。
上記を見てもわかる通り、Bさんは資産家で、不動産経営にも積極的に取り組んできた人物です。具体的には2件のアパートを所有し、入居者を付けて家賃収入を得ているのです。
家族信託では、このような収益不動産を信託財産に含めるケースも、数多くあります。

相談内容

長年自分で管理
してきた財産
なのだが…

Bさんは、長年企業で経理部長として勤務してきた実績のある人物で、自分自身が経営しているアパートに関しても、管理や確定申告などは、すべて自分で行ってきたそうです。
しかし年齢が90歳となり、思考力や体力の衰えを感じているため「今後は管理や確定申告などを、自分でしなくても済む状況に整えていきたい」と考えています。
また子どもの中でも、次男が「父の資産が毀損しないような仕組みを作りたい」と熱心に取り組む姿勢を持っており、相談に同席。このことについては、長男・三男の同意も得ているそうです。
さらに流動資産の合計も多額なため、相続税対策も「可能であればしていきたい」と希望していました。

司法書士・堀内先生が導いた解決方法

潤沢な財産を3人兄弟で
平等に分配するために

お父様と次男様で家族信託契約を結ぶことになりました。信託される財産は、2件の収益アパート。そして現預金と有価証券のうち約2.8億円です。
家族信託の期間は、お父様の相続発生をもって終了する契約です。その後、3人兄弟が不動産を平等に単独所有できるよう、調整しました。
なお今回は、3人兄弟のうち次男様が受託者になっています。長男様、三男様もこれに同意しているものの「きちんとチェック機能を働かせたい」とのご希望がご家族でおありだったため、「信託監督人」という役割を長男様が担うこととしました。これにより、定期的に長男様のチェックの目が入り、ご家族にとっての透明性も確保できます。

監修協力の画像司法書士リーガル・パートナー
代表
 堀内貴敬
POINT
01

Bさんは上場株式を大量に所有している資産家でした。今回の家族信託契約締結にあたり、それらを換金したうえで家族信託しました。なお上場株式は、そのままの状態では家族信託の信託財産に含めることができません。相談時にあらかじめその事実を共有したため、作業はスムーズに進みました。

POINT
02

上場株式を換金したうえで、収益用区分マンションも購入しています。これにより3人兄弟に行き渡る不動産が確保できました。家族信託は、直接的な税務対策にはなりませんが、本件のように多額の流動資産がある場合、活用することで、相続税評価額を圧縮することは可能となります。

POINT
03

特定の推定相続人が受託者になることで、別の推定相続人から「あいつは横領を働くのではないか」と疑いの目を向けられる可能性があります。お金が原因で家族関係に悪影響が及ぶのは、考えもの。このケースのように「信託監督人」を置くことが、家族関係を良好に保つ一助となるでしょう。

司法書士リーガル・パートナー代表 堀内先生の想い

監修協力のサムネイル画像今回の案件を担当させていただいたうえで、特に印象に残ったのは「透明に、そして公平に家族信託を利用したい」というご家族全員の姿勢です。と言っても、喧嘩や対立などは一切ありませんでした。むしろ「将来的に、お互いに対して疑いの念を持たないようにするためにはどうすればよいか」という率直な相談をいただきました。そのやり取りの中で『信託監督人』の設置も決まっていたのです。「正しく家族信託を運営していこう!」というお気持ちの強さは、私たち司法書士にとっても、勉強になりました。また区分マンションを新たに購入するにあたり、弊所のネットワークを活かし、相続税評価と時価のバランスが良い物件をすぐにご紹介できたのも、良かったです。

CASE 03

分割しにくい不動産を
平等に分け与えたい

アパマン経営
相談者のアイコン

Cさん(75歳男性)

家族構成
5人家族妻、子供3人

資産の状況

相談者は、都内に自宅兼収益物件として賃貸併用住宅一棟(相続税評価額約7,300万円)を所有しています。不動産以外の財産は、預貯金約1,800万円と上場株式約600万円です。その内容を見てもわかる通り、財産の中でも不動産が占める割合が、高くなっているケースです。
収益不動産の場合は、所有者であるCさんが認知症を発症してしまうと、新たな契約が結べなくなるというリスクがあります。入居者付けがスムーズに進まなくなるのはもちろん、大規模な修繕などもできなくなってしまうので、経営全体が暗礁に乗り上げてしまいます。Cさんのように、早めの対策を講じておくことは、リスクヘッジとして非常に有効と言えそうです。

相談内容

信託財産である
建物の運用管理と
その後について

相談者は「自分の財産は子供たちに平等に相続してもらいたい」と考えていますが、総財産に占める不動産の割合が大きく「誰かの単独所有にすることができそうにない」と、頭を悩ませていました。
また当面は賃貸併用住宅の管理を「長男に任せたい」という希望を持っていますが、建物が築30年を過ぎているため、あと15年したら「建て替えか、売却か」を判断する必要があります。「その頃には自分は他界していると思うが、子供たち3人が不動産をめぐり、争うような結果にはなって欲しくない」とも考えていたようです。
このように、現金と違って明確な分配が難しい不動産については、運用管理だけでなく売却の可能性を考えながら、相続の詳細を決めなくてはなりません。

司法書士・堀内先生が導いた解決方法

兄弟の中での役割分担を
あらかじめ明確にしました

当初の受益者は、もちろんお父様なのですが、ご相続が発生したのちは、第2次受益者を3人のお子様としました。受益権の割合は3分の1ずつで、平等です。
なお、お父様の他界後もあえて家族信託を継続する理由は、この賃貸併用住宅の管理や修繕、建て替えや解体などの大きな判断の必要が生じた際、長男1人の判断に委ねることができるからです。
契約では財産の管理処分権はあくまで長男様にあり、ほかの御兄弟はあくまで受益者として、収益をもらう権利の保有者となっています。敢えて年功序列のかたちで、あらかじめ役割を明確にしておくことにより「将来揉めないで欲しい」というお父様のご希望に、近づけたと思います。

監修協力の画像司法書士リーガル・パートナー
代表
 堀内貴敬
POINT
01

まず家族信託で委託者となるCさんは、受託者に3人兄弟のうち長男を指定したいと考えていました。年長の息子を信頼し、先々の「建て替えか、売却か」の判断を委ねたいという希望を持っていたのです。そこで長男を受託者とし、Cさんが他界した後も信託財産に関する決定を行使する権限を与えました。

POINT
02

家族信託の契約期間は、委託者の希望で自由に設定することができます。このケースでは、Cさんの他界後も継続するかたちになりました。とは言えCさんもまだ元気なので、今後お金が必要となった場合には、受託人である長男を通して、不動産から発生する利益を受益することができます。

POINT
03

委託者であるCさんが亡くなった後は、第2次受益者として3人の子供たちを選定。受益権の割合は3分の1ずつと、平等に定めました。「受託者が長男だけなんて」という不満が、ほかの兄弟から発生しないよう、配慮したかたちです。これにより「家族間で揉めないように」というCさんの希望が反映されました。

司法書士リーガル・パートナー代表 堀内先生の想い

監修協力のサムネイル画像本案件の内容については、相談者であるお父様のご希望に沿うためにどうすればよいのか、私どもでも頭を悩ませました。自分の財産をめぐり、子供たちの間で揉め事が起こるのは、どんな親にとっても喜ばしくないことだと理解できるからです。さまざまなアイディアを検討したうえで、「継続・受益権の共有」という手法を提案したのですが、お父様が「私の想いを汲み取ってくれているね」とおっしゃってくださいました。非常に喜ばしかったです。
本案件は、相談者であるお父様が亡くなった後も、続いていきます。長い期間に及ぶ家族信託になりますが、皆様にとってベストな結果になるように、引き続きサポートをさせていただきたいと考えております。

相続で困らないための財産管理「家族信託」とは

認知症対策として活用できる家族信託とは?ここでは知っておきたい基本的な知識情報をまとめました。「家族信託というやり方があることは知っているのだけど、詳しいことはわからない。もっと知識を深めて、前向きに検討したい」と考えている人は、ぜひご一読ください。

よくある
質問

大切な財産を託す相手である受託者の範囲、責任・義務をはじめ、家族信託と財産管理委任契約との違い、アドバイザーの必要性など、「家族信託とは?」についてよくある質問をもとにまとめました。

家族信託の受託者に
なれる人の範囲は?

範囲の制限はありません。ただし信託法において「未成年者、成年被後見人、被保佐人は受託者になれない」と定められています。また業者が受託することも禁止されています。

受託者にはどんな責任や
義務があるの?

まず基本的に受託者は、委託者の財産を管理し、損益を与えないよう管理する義務があります。口座管理、帳簿記入などの業務は、最低限遂行しなくてはなりません。

信託期間中に受託者が亡くなった場合はどうなる?

委託者が存命の場合は、受益者と相談して新しい受託者を決めることができます。委託者が亡くなっている場合は、受益者の判断で新しい受託者を決めることができます。

家族信託と財産管理委任契約はどう違う?

『委任契約』は、一見すると家族信託に似ていますが、こちらの方法で財産管理をしている間に、委任者が認知症になってしまうと、金融機関の手続きができなくなります

家族信託の契約は
専門家に依頼すべき?

家族信託の登場は2006年の信託法改正以降。新しい財産管理法なので、法的にも有効な契約を締結するため、専門家のコンサルやアドバイスを受けることは必要不可欠です。

家族信託のメリット・デメリット

家族信託でできること・できないことまとめ

最も大きなメリットは、親が前もって子に財産の管理・運用を託すことで、認知症になった場合も資産を凍結させることなく管理・運用していけると言う点。認知症になった方の資産保全を目的に、財産を裁判所の監督下に置く「成年後見制度」と比較して、財産のスムーズな活用が可能です。

一方、デメリットとしてまず挙げられるのは、制度が普及されてからまだ日が浅いため、経験豊富なアドバイザーがまだまだ少ない点。他にも、信託財産が不動産の場合、損益通算ができない点や、遺言とは違って途中で内容変更できない点などもデメリットとして考えられます。家族信託のメリット・デメリットをまとめて詳しく解説します。

家族信託と遺言書との違い

遺言書との違いについてのイメージ画像

遺言だけでは不安がある方にも使える家族信託とは?

遺言書は本人の死後、初めて効力を発揮します。「遺言書を書いておけば、安全」と考えている人も多いのではないかと思いますが、現実にはもっと複雑なケースが頻発しています。 例えば認知症を患ってしまうと、本人による財産管理は困難になります。介護や通院に多額の費用が必要なのにも関わらず、家族は財産に手が付けられず、財政状況の悪化を招くということもあるのです。家族信託を事前に利用しておけば、本人が認知症になっても、委託者に財産管理を任せられるようになります。このため家族の負担は、大きく軽減されることになります。

家族信託にかかる税金

家族信託にかかる税金についてのイメージ画像

家族信託で発生する4種類の税金と節税の考え方

家族信託は、生前贈与の際に発生する課税金額を抑制するのに役立ちます。しかし財産を管理する方法には違いありませんので、利用の際に税金が発生するか否かは、大いに気になるところです。家族信託を利用するにあたり、関わりがあると思われる税金は贈与税、相続税、所得税、法人税、譲渡所得税、登録免許税、固定資産税などです。とは言え「家族信託を利用することで、これらの税金が新たに課せられるようになってしまう」という意味ではありません。あくまで家族信託の契約を結ぶ中で、留意しなくてはならない税金であるということです。その詳細について知りたいという方は、ぜひページの内容に注目して下さい。

家族信託にかかる費用

家族信託にかかる費用についてのイメージ画像

専門家の報酬金額や諸経費がまるわかり!

家族信託は、名称通り家族間で行われる財産管理法なので、高額な費用がかかりません。とは言え「費用が全く必要ない」というわけでもないのです。発生すると考えられるのは「信託契約書を作成するために必要な費用」、「登記費用」、「専門家に支払う費用」、そしてその他の費用といったところです。中でも気になる「専門家に支払う費用」ですが、信託評価額の0.1~1%程度が目安です。倍率は評価額が高くなるほど下がっていき、1億円以下の場合、大体30~100万円が基本的な相場になります。その費用にはコンサルティングや契約書作成など、さまざまな内容が含まれています。

家族信託の手続き方法と手順

手続き方法と手順についてのイメージ画像

知っておきたい家族信託の手続きの基本

家族信託は、まだ制度として施行されるようになってから20年も経っていない、新しい財産管理スキームです。「何から手を付ければ良いのかわからない…」という人も多いでしょう。その手続きや手順を時系列で理解しておくと、実際の利用をイメージしやすくなります。主な作業としては「家族信託の目的と契約内容を決める」、「契約内容を書面化した後、公正証書へとブラッシュアップする」、「財産に不動産が含まれる場合は、登記の名義変更を行う」、そして「受託人は家族信託専用の口座を作り、送金に活用する」という流れになります。中でも大切なのは「目的や内容を決める」こと。誰が何のために、どんな内容で財産管理を行っていくのか、あらかじめよく考えておくことは大切です。

家族信託の契約書の書き方

契約書の書き方についてのイメージ画像

家族信託で起こりうる無用なトラブルを防ぐために

家族信託では、財産の実質的な管理を受託者に任せることとなります。「家族の間の取り決めに契約書など不要」と考えるかもしれませんが、「委託者に複数の子供がいた場合、受託者以外の子供たちから不満が出る」、「信頼して財産を預けたら、勝手に転用されるなどの裏切りに遭う」などなど…、トラブルの可能性もゼロではありません。委託者本人や、善意の受託者を苦しめないために、やはり契約内容をきちんと書面化しておく必要がありそうです。また信託に関する契約書の作成には、専門知識が必要。素人が書式に則らず、書き殴ったものに判だけ押しても、信ぴょう性が疑われてしまいます。このため作成は、専門家の手にゆだねる必要があります。

家族信託と成年後見制度の比較

成年後見制度との比較についてのイメージ画像

どう違う?財産管理法としての仕組みを比較解説

成年後見制度は、認知症などを患い、判断能力が衰えている人の財産を管理保全するための制度として、2000年に登場しました。 しかし近年は「介護費用が必要なのだが、本人の銀行口座からお金が下ろせなくて、成年後見制度を利用せざるを得なくなった」という申請理由が増加中。金融機関は話し合いに応じる態度すら見せず「成年後見制度をご利用ください」の一点張りなので、不満が生じるのも当然です。成年後見制度の施行から6年後に登場した家族信託には、そのデメリットを補う、メリットが数多く挙げられます。より自由度の高い財産管理法としておすすめできますので、成年後見制度との違いを、きちんと理解しておく必要があります。

認知症対策親のために
家族信託でできること

本人にとって、そして家族にとって大きな問題である認知症。深刻な社会問題として、ひとり一人が真剣に向き合う必要があります。家族信託とは、親が認知症になった場合の資産凍結リスク対策として有効な財産管理法です。その理由を詳細情報と共にまとめています。なお家族信託においては、法律でできること・できないことの両面を理解して活用する必要があり、専門知識を持たない個人が手続きするのはリスクも伴います。失敗しないために信頼できるアドバイザーに相談するのがよいでしょう。

知症対策として
家族信託は有効?

親が認知症になる前に、所有している財産の管理・運用をあらかじめ子に託しておくことで、将来にわたってスムーズな活用ができるようになります。なお委託者は、所有財産すべてを信託する必要はなく、範囲を限定するなど、自由に定められます。

知症になったら、
財産はどうなる?

認知症になり、判断能力が低下したとみなされると、本人による財産管理・運用に関わる法律行為が有効だと認められなくなる可能性があります。つまり、本人の口座から預貯金の払い戻しができなくなったり、持ち家の売却処分も制限されてしまうのです。

族信託でできること

家族信託では、委託者の意思に沿いながら柔軟な財産管理が可能。契約期間や信託財産の範囲も自由に設定できます。活用についてはアドバイザーに相談するのがおすすめです。

キャラクターのイラスト画像

知症になっても、
家族信託できる?判断基準は?

認知症が進行してしまうと、家族信託ができなくなります。事前対策として、早めに準備を進めていくことが肝心です。しかし軽度認知障害の場合なら、まだ間に合うことも。深刻化する前に、相談するようにしましょう。

族信託の契約に
第三者の承認は必要?

第三者の承認は必要なく、財産を委託する「委託者」と、それをうける「受託者」の間での契約があれば成立します。ただ親族間の無用なトラブルを避けるため、事前周知を行う等の配慮はあったほうがよいでしょう。

居住用不動産の売却

実家の名義を持つ親が、認知症を発症する前にできる財産管理対策として、家族信託は有効です。ここでは信託財産として、実家などの居住用不動産を含めた家族信託活用事例を紹介しています。

収益物件の経営

親が収益物件の経営を行っている場合、認知症になってしまうと賃貸契約締結などの法律行為が難しくなり、さまざまな問題が生じます。事前に信託財産に含めておくことでリスク対策ができます。

土地の活用・継承

先祖代々受け継いできた土地があるという場合、その継承についてきちんと手を打っておくことは非常に大切。家族信託で子に権限を与えて、アパート・マンションを建てるなど有効活用を託すことも可能です。

生活資金の管理

親が独居しているという場合、子供に生活資金の管理をしてもらうことで、防犯や詐欺予防に役立つケースがあります。家族信託なら、委託者が信託財産の範囲を自由に決められるのもポイントです。

【対談企画】相談相手の選び方・見極め方

「家族信託」プロフェッショナル対談【対談企画】相談相手の選び方・見極め方

家族信託は、自由度の高い財産管理法として注目を集めています。個人で進めるより、専門家のアドバイスを活用し内容を整備していくのがおすすめ。「では誰に相談すべき?」「実力を判断するためのポイントは?」司法書士と税理士の対談から紐解きます。

司法書士×家族信託

法律上の手続きや書類作成を代行するほか、不動産や会社設立にあたっての登記も担当するなど、法務に関する知識を横断的に有する点は大きなメリット。家族信託には不動産を含めるケースが数多いため、心強いパートナーとなってくれるでしょう。

弁護士×家族信託

弁護士は、いわば交渉や法律相談に関する専門家。最悪の状態を考えた場合に対応を任せられるので、紛争性が予見される場合には、特に適任と言えます。

税理士×家族信託

特に信託財産の規模が大きい場合や、法人が絡む案件の場合は、税務の視点が必要になります。アドバイザーの一員として税理士がいれば、安心感は高くなります。

不動産会社×家族信託

提供している不動産の管理・運用をスムーズに進めることを主な目的として、家族信託セミナーなどを開催しています。継続的に不動産を活用していくためのアドバイスを得られる点がポイントです。

保険会社×家族信託

認知症に備える「認知症保険」を各社が相次いで販売するなか、もうひとつの対策として家族信託の活用を、ライフプラン提案に組み込むケースがあります。保険活用と合わせた提案の見極めが重要です。

金融機関×家族信託

主に金融資産に関するコンサルティング・サービスの一環として、家族信託の相談に対応しているケースが見られます。司法書士らと連携をとり、セミナーを展開している場合もあるようです。

OTHER CASE

その他の家族信託活用事例

生活資金管理

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Dさん(76歳男性)

家族構成
4人家族妻(71)、長男(41)、次男(32)
資産の状況
相談者は、東京に住む夫婦(夫76歳と妻71歳)。2人の間には41歳の長男と、32歳の次男がいます。資産は、都内にある自宅(相続税評価2,000万円)と預貯金約4,500万円です。また家族の中で、次男は重度の障害を持っています。現在まで、そしてこれからも、自立して生活することが困難な状況にあります。
相談内容
相談に訪れた夫婦は、自分たちが亡き後、障害を持つ次男がどうなってしまうのかと、大変心配していました。次男は自分で財産を管理する能力がありません。遺言ではすべてを長男に渡す予定でしたが、家族信託という方法があることを知り、長男に「次男のために財産を管理する義務」を負ってもらいたいと考えるに至りました。

生活資金管理

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Eさん(86歳男性)

家族構成
4人家族妻(85)、長女(59)、長男(55)
資産の状況
資産は自宅マンション(時価約6,500万円)と、静岡県熱海市にあるリゾートマンション(時価約1,000万円)、そして現金6,000万円です。Eさんには代表を務める会社もあり「現在は従業員に、事業を継承中」とのことでした。また夫婦には年金収入もあるため、生活に比較的ゆとりがありました。
相談内容
現在、Eさんは病気療養中で、妻が主に介助しているとのこと。自宅マンションは駅から遠く、金融機関に行くのも大変です。頻繁に訪問している長女か長男が、キャッシュカードで引き出して手渡しをしている状況でした。TVで家族信託を知り、これを利用してお金を管理していきたいとのことでした。また、Eさんには若干の物忘れも出始めています。

不動産売却

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Fさん(79歳男性)

家族構成
5人家族妻(77)、長男(53)、長女(51)、次女(48)
資産の状況
相談者は、都内に住むFさんと、その長男。子供たちはそれぞれ結婚しており、持ち家で別々に暮らしています。Fさんの資産は、都内の自宅(相続税評価約4,000万円)と収益区分マンション(相続税評価額約300万円)現預金4,000万円など。収入はFさんの年金が月で約9万円、収益不動産の家賃が月75,000円です。
相談内容
Fさんの妻はすでに認知症で、いつも離れずに介助生活を送っていました。自身の年齢と体力を考えると「このままでは共倒れになる」という危機感を持つようになりました。そこで「今から資産の管理を長男に任せたい」と考えるようになったのです。またゆくゆくは、夫婦2人で同じ介護施設に入居したいという希望もありました。

不動産売却

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Gさん(82歳女性)

家族構成
2人家族長男(58)
資産の状況
相談者は、東京都狛江市に住むGさんと、世田谷区に住む長男。Gさんの夫はすでに他界しています。手持ちの資産は、東京都狛江市の自宅マンション(相続税評価約2,000万円)と、預貯金(約1,500万円)の合計約3,500万円です。またGさんの収入は、2ヶ月で約40万円支給される年金のみとなっています。
相談内容
Gさんは夫が他界してから、マンションで一人暮らしをしています。長男が週に1度様子を見に行く中で、物忘れの兆候や足腰の衰えを感じるようになったそうです。そこで同居を持ち掛けましたが、Gさんは「息子夫婦に迷惑をかけたくない」と、施設入所を希望。その費用捻出のため、家族信託を活用したいと思っています。

アパマン経営

相談者のアイコン

Hさん(90歳女性)

家族構成
3人家族長女(65)、長男(62)
資産の状況
相談者は、都内に住むHさん(90歳)と、近隣で家庭を築いている長男。Hさんの夫はすでに他界しています。Hさんの資産は、東京23区内の自宅(相続税評価約3,500万円)と、同じ区内にある収益不動産(一棟アパート/相続税評価約6,000万円)。そして預貯金約6,000万円と有価証券約3,000万円です。
相談内容
Hさんは高齢でありながらも、コミュニケーションをしっかり取れるなど、認知症の兆候は見られません。金融機関への振込みなども自身で行っていますが、アパートの家賃管理や、管理会社とのやり取りを、負担に感じるようになってきました。近くに住む長男に「家族信託を活用しながら、財産管理を任せたい」と考えています。

アパマン経営

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Iさん(84歳男性)

家族構成
4人家族妻(81)、長男(58)、次男(53)
資産の状況
相談者は港区に住むIさんとその妻、そして長男です。Iさんは病気を患っており、現在闘病中。症状は楽観視できない状況です。資産は、都内にある自宅兼賃貸ビル(相続税評価約8,500万円)と、預貯金約7,000万円、そして投資していた上場株式約3,500万円。決して少なくはない資産ですので「スムーズな運用管理を」と考えたそうです。
相談内容
自宅兼賃貸ビルは、築約40年経過していますが、満室稼働中。しかし闘病中のIさんは「今後は管理を長男に任せたい」と考えていました。また「自分が死んだ後の、妻の生活も気がかり」とのことでした。なお財産承継については大きなこだわりがなく「二人の子供たちで話し合って決めればいい」と考えています。

土地活用・継承

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Jさん(86歳男性)

家族構成
3人家族妻(年齢不明)、長男(52)
資産の状況
相談者は東京都文京区に住むJさん(86歳)と、その長男(52歳)。Jさんは現在、文京区の一戸建てで、妻と2人で暮らしています。手持ちの資産は自宅と建物(相続税評価約1億円)と、預貯金と有価証券の合計約5,500万円です。長男は高齢となった両親が、古い一戸建てでの暮らしを続けていることを心配していました。
相談内容
相談者の所有している土地は比較的広いため、分筆して一部を売却し、売却金で賃貸併用住宅を建設したいと考えています。しかしJさんには不動産売買や建物建築のための打ち合わせなどが、大きな負担となりそう。期間も1年以上かかる見通しです。そのため、家族信託で長男に権限を与え「作業を代わりに進めて欲しい」と希望しています。

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アドバイザー

本サイトを監修してくれたのは、家族信託サポートで年間150件の相談実績を誇る「司法書士リーガル・パートナー」代表・堀内貴敬(ほりうちよしたか)先生です。年間600件以上の不動産法務関連サポートで蓄積した豊富なノウハウと、税務・法務にワンストップで対応できるネットワークを活かして、不動産取引・相続をはじめ、事業継承に至るまで、あらゆる課題解決を提案しています。

監修協力の画像司法書士リーガル・パートナー
代表 堀内 貴敬

プロフィール

1983年に東京都杉並区で生まれ、明治学院大学を卒業。2007年に司法書士の資格を取得後、東京都中央区日本橋の司法書士事務所にて約6年勤務。
勤務時代は、不動産取引サポートをメインとしながら、相続ほか、民事再生(個人再生)、自己破産、過払い金などの債務整理や、会社設立といった法人関係の相談など幅広い法務領域を担当。その後独立を果たし、2013年に司法書士リーガル・パートナーを開設しました。
高齢化社会を背景に生前対策への関心が集まる中、民事信託(家族信託)というスキームにいちはやく可能性を感じ、積極的に研究・提案を推進し、現在に至ります。

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司法書士・堀内先生の考え

家族信託を通じた
親孝行を大切にしたい
家族信託を通じて行われることは、言わば「子が親のために、無償で財産を管理・運用する」ということ。親に残された期間を有意義に使ってもらうために、子が例えば離れた実家を管理するなどといった負担を受けたのかと思うと、その愛情の尊さを感じずにはいられません。
家族信託は、そんな「家族愛」と言う人間的な感情を、具体的な行動として法律に則って表現できるという点で、非常に意義あるものだと私は考えています。
中立公正な立場で想いを
汲み取るプロに相談を
しかしながら、家族信託は普及してから日が浅く、士業や専門家と言われる中でも、本当に理解しているアドバイザーはまだまだ少ないのが現状。一方で、家族信託が正しく普及されるためには、何らかの意図を持った「営業手段」として提案されるのではなく、相談者様が本当に納得して使われることで、喜んでいただける事例をひとつでも増やしていくことが重要だと考えます。
本サイトを通じて、信頼できるアドバイザーの選び方を理解して頂き、親孝行を一段上に押し上げるお手伝いができれば幸いです。

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【対談企画】相談相手の選び方・見極め方

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