認知症の金銭トラブル
認知症が進行すると、日常生活の様々な場面に支障をきたしてきます。記憶力の低下やこれまでできていたことがどんどんできなくなっていくなどの他に、金銭関係についてのトラブルも多く見受けられます。親と同居していない場合、ある日気がつけば預貯金がゼロになっていることも…。
このページでは、主な金銭トラブルについて以下に説明します。
高額商品の購入
認知症の症状として判断能力の低下が挙げられます。あるものが自分にとって必要かどうかの判断が働かず、かつ高価や不要であれば購入しないという抑止能力も効かなくなるので、値段に糸目をつけない「衝動買い」が増えるケースも。買ったそばからまた新しく注文し、玄関に同じ商品が段ボール箱に入ったまま山積みになっていたり、免許もないのに車を購入してしまったりする例もあります。
詐欺や悪徳商法の被害にあう
頻繁にニュースとなる高齢者を狙った詐欺事件。手を変え品を変え、次から次へと新たな手口が生まれます。何故こんな手口に、と思うかもしれませんが、認知症になると、「これは怪しいのでは」という判断力が低下してしまい、被害に遭ったという認識がないのですから仕方ありません。詐欺や悪徳業者のグループは、一人暮らしのお金がありそうな高齢者を見定め、一度引っ掛かると、彼らなりのコミュニティーでもあるのか、何度も被害に遭うケースも多いのです。なお、これらの被害者の中には認知症とまではいえない方も少なくありませんが、高齢者はどうしても咄嗟の判断力がつきにくくなっていきます。家族は十分に注意しなければなりません。
自分のお金が盗まれたと言い出す
自分で使ったにもかかわらず、それを忘れて空っぽの財布に驚き、「私のお金が盗まれた」と言い出すことがあります。「誰かが」盗ったと言っているうちは、宥めるなどで落ち着くかもしれませんが、家族や知人などを名指ししたうえで「盗った」と思いこむようになると、その人物を攻撃し出す恐れも出てきます。
それでも、身内だけなら我慢のしようもあるかもしれません。例えば手元に現金がないと不安でたまらず、年金が振り込まれると一気に引き出してしまう人の場合、逆に財布を見ずに通帳だけを見て「お金がない!」と銀行に怒鳴り込むなど、第三者を巻き込んでしまうということもあります。
家族が金銭を管理する方法
親を金銭トラブルから守る一番の解決策は、家族が親の通帳やカード、金銭を管理することです。とはいえ、親が自分のお金を家族に委ねることを素直に認めてくれるとは限りません。また、既に認知症が進んだ状態では、家族が勝手に親の財産を管理することはできず、法定後見人制度を利用するしかありません。
このような状況を避けるために、親の意志や判断が明確なうちから家族信託を検討するのもひとつの方法です。たとえば財産を子が預かっても、親のためにしか使うことはできないなど家族信託の特徴を親子ともに身につけ、親に納得してもらったうえで導入を進めると、万が一の場面の備えとなるでしょう。その際、家族信託はまだ歴史が浅いので、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
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