家族信託における受諾者の義務とは?項目別に解説!
家族信託とは、財産の管理を依頼する「委託者」、実際に財産の管理をする「受託者」、発生した利益を得られる「受益者」の3者によって結ばれる契約です。
受託者には、委託された財産を適切に管理・運用するために守るべき、多くの義務があるのをご存知でしょうか。
ここでは、家族信託の受託者に発生する義務について詳しく解説していきます。
善管注意義務
善良な管理者の注意義務を略して「善管注意義務」といいます。
善管注意義務は、信託目的を達成するために財産の管理を注意しておこなわなければなりません。信託された財産は受託者のものではないため、受益者のためにきちんと管理する必要があります。たとえば不動産を信託された場合は、建物の修繕もふくめて受託者の役割です。
忠実義務
忠実義務は、多くの義務の中でも重要な項目のひとつです。
受託者の忠実義務は、法令及び信託目的に従い受益者の利益のために、信託財産の管理や処分などにかかる信託事務を忠実にすべておこなうという義務です。
もし、受託者が利益が相反したり競合したりする行為を行った場合、忠実義務に違反してしまうため厳しい制限が設けられています。
分別管理義務
受託者には、自分の固有財産や他の信託財産と家族信託によって任された信託財産を分別し管理する義務があります。
現金を信託された場合は帳簿を作成し、お金に動きがあればすべて帳簿につけましょう。
信託財産は、その種類によって分別・管理方法が異なります。信託契約の中で分別・管理方法を特別に設けられますが、信託の登記や登録に関する義務を免除することは不可能です。
たとえば、登記・登録しなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗できない財産の場合、登記又は登録する必要があります。
金銭以外の動産の場合、外形上区別できる状態で保管しなくてなりません。金銭やその他の債権などは、帳簿を作成し動きを明確にします。
自己執行義務
受託者は財産の管理や処分を委託されているため、自分以外の他人に委託財産の管理や処分を依頼することはできません。
信託事務は、受託者本人がおこなう義務があるため、注意が必要です。
ただし専門性の高い信託事務は、受託者一人では管理や処分が難しいことも少なくありません。
受益者の利益を守れない可能性をあると判断された場合は、例外的に第三者への委託が可能です。
公平義務
受益者が2人以上の複数人で存在する信託の場合、受託者は受益者全員に公平な職務をおこなわなければなりません。特定の受益者だけが、優遇されることを防ぐために設けられた義務です。
帳簿等の作成・報告・保存の義務
受託者は、信託財産に関連する帳簿やその他の書類の作成が義務付けられています。毎回の帳簿作成以外にも、年に1度は貸借対照表や損益計算書または財産目録などを作成し、受益者に財産に関する情報を提供しなくてなりません。
これら信託財産の書類は一定期間保存する必要があり、受益者から書類の開示を求められた場合、提示する義務があります。たとえば、信託に関する取引の領収書やレシート、帳簿などは信託法上10年間保存しなくてなりません。
損損失てん補責任等
万が一、受託者が信託財産の管理を怠り損失が出た場合は、損失の補填や原状回復の責任があります。
ただし、受益者には受託者の損損失てん補責任等の義務を免除することも可能です。
参考サイト・文献
- 宮田総合法務事務所:家族信託の受託者の義務と責任
- 【書籍】柴崎智哉著:『Q&A 「家族信託」の活用 これで親子の相続・介護トラブルを防ごう! 』
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