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知っておかないと怖い!口座凍結のリスク

口座が凍結されてしまうのはなぜ?

普段から気軽に出し入れしている銀行口座。しかし、名義人の急死や認知機能が衰えたと判断された場合、金融機関が口座を凍結してしまうことがあります。この「凍結」とは、口座自体が使えなくなることで、お金が入っていても引き出すことはできません。

銀行口座が凍結されてしまう理由

銀行口座が凍結されてしまう理由は、主に4つあります。1つ目は借金などの債務整理によるもの、2つ目は架空口座など犯罪に使用されている場合、3つ目は名義人が死亡した場合、そして4つ目は名義人が認知症と判断された場合です。ここでは、名義人が死亡した場合と、認知症と判断された場合を見ていきましょう。

当人が認知症になってしまった場合

例えば、家族が認知症の名義人の代わりにお金をおろしにいき、本人でないことがわかると必ず理由を聞かれます。そのときに、認知症で銀行に来られないことを伝えたとしたら、その場で口座は凍結されてしまいます。これは、銀行の判断で行われます。

なぜ、凍結されてしまうかというと、不正利用を防止するためです。親族とはいえ、「ちょっとだけなら使ってもいいだろう」とお金をおろすかもしれませんし、詐欺的な行為をする恐れもあります。また銀行側が認知症とわかっていながら黙認し、トラブルになれば責任問題にもなりかねません。ですから、これらのことを防止するために即時に凍結が行なわれるのです。

認知症になった場合は後見人が必要

当人が認知症になってしまった場合であっても、当人が事前に委託者として家族信託契約を交わしていれば、受託者は変わらずに財産管理などの信託業務を続けられます。

一方、信託契約前に認知症になってしまった場合は、その進行具合によっては残念ながら家族信託を利用できない可能性も。契約は法律行為であり、当人同士の意思表示が不可欠です。認知症においては意思能力や判断能力の欠如がみられるため、果たして本人が心から内容を理解・納得したうえで契約したのかどうかが分からなくなります。もちろん、本人名義の預貯金の引き出しなども難しいでしょう。普段何気なく行っている「銀行からの引き出し」であっても、銀行に対して持っている債権を受け取るというれっきとした法律行為のため制限がかかります。

このような場合は成年後見人制度を利用し、本人に代わって後見人が信託契約を交わすことになります。

後見人は親族がなるもの?

もし当人が認知症になる前に親族や知人と任意後見契約を結んでいれば、その契約相手が後見人になります。そうでなければ家庭裁判所に法定後見人を付けるための申し立てをしなければなりません。成年後見人がつき、業務を開始できるまでには数か月かかりますし、申立て時に親族が後見人になりたいと希望できますが、現在のところ親族が後見人になれる割合は申し立ての3割程度。たいていの場合、家庭裁判所は弁護士や司法書士などの専門職後見人を指定しているようです。

後見人は当人(被後見人)のために財産を管理するため、家族信託では可能な財産の運用などの行為はできません。また後見人には当人の財産から、その財産相額に応じて家庭裁判所が決定した額を報酬として支払う必要があります。

当人が亡くなってしまった場合

名義人が死亡して、銀行がそれを把握したときにも銀行口座は凍結されます。理由としては、相続が正当に行なわれるようにするためです。もし、相続人の一人がほかの相続人の許可を得ずにお金をおろしてしまえば、正常な相続手続きができなくなります。銀行はこのようなトラブルを未然に防ぐために、口座凍結を実施するのです。

名義人が死亡した場合でも、銀行は自治体などから連絡を受けるわけではありません。ほとんどは、相続人からの連絡によるものです。口座の凍結は避けたいと思う方もいるかもしれませんが、もし、相続人が複数いる場合には勝手に引き出されることがないように、連絡をして即時凍結をしてもらうほうがよいでしょう。

年金も使用できくなる

口座の凍結は、非常に大きな問題となっています。認知症と判断された場合には、高齢者の方にとって生活の糧である年金も受け取れなくなってしまうのです。そうなれば、家族は認知症の介護に加えて、金銭的な援助もしなければならなくなり、大きな負担を強いられることになります。

生活にかかわる引き落としも出来なくなる

「お金は引き出せなくなるかもしれないが、今まで継続してきた引き落としはできるのではないか」と考える方もいるでしょう。しかし、口座の凍結とは、すべての取引ができなくなるということです。年金や貯金が引き出せなくなることはもちろん、毎月の光熱費やクレジットカードの引き落とし、ローン返済など、すべてができなくなります。これらの支払いを毎月現金でおこなうことは、とても大変なことになるでしょう。

口座凍結の解除方法は?

口座の凍結は、ご紹介してきたとおり、生活自体が破綻しかねない重大な問題です。一刻も早く凍結の解除をしたいところですが、解除には法律的な手続きが必要となります。

後見人制度を利用する

認知症による銀行口座の凍結で、まず考えられるのは成年後見人制度を利用することでしょう。この制度は、家庭裁判所に申告して、成人後見人を選任してもらうという方法です。成年後見人は、裁判所に認可された立場ですから凍結された口座から生活費などを引き出すことができます。

しかし、成年後見人は必ずしも家族がなれるわけではありません。逆に家族や親族が後見人になることは少なく、裁判所は弁護士や司法書士など法律に詳しい第三者を専任する傾向にあるようです。また、成年後見人が選任されても、使える金額は、口座名義人の生活に必要な分だけです。多額な金額が必要なときには、家庭裁判所に申請して、許可を得る必要があり、時間と手間が多くかかるといわれています。

法改定により一部引き出せるようになった

認知症による口座凍結では、成年後見人制度を利用する必要がありましたが、名義人が死亡して口座凍結した場合はどうでしょうか。

基本的には、相続人全員が遺産分割の同意書に印鑑を押して、それが正式なものと認められれば凍結は解除され遺産として処理されます。しかし、遺産分割協議がうまくいかなければ、何年も凍結したままという状況も考えられます。その間にも葬儀代や、亡くなるまで入院していた場合には医療費なども支払う必要があります。

このようなことで金銭的に困ったという人が多かったため、政府は平成30年に家事事件手続法を改正、遺産分割協議の途中でも個人の預貯金を凍結された口座から引き出すことが可能になりました。

凍結口座から預貯金を引き出す手続き

この手続は仮払いとして、家庭裁判所に申請する必要があります。他の相続人の相続分を侵害しない範囲で、生計を同一にしていた場合は生活費、葬儀代などが認められます。しかし、裁判所の許可が必要なことから、手間と時間がかかります。そこで、令和元年7月1日からは、裁判所の認可無しで直接銀行に仮払い申請ができるようになりました。金額は「相続開始時の預貯金債権の額(預貯金残高)×1/3×仮払いを求める相続人の法定相続分」と決められていますが、遺産分割協議終了までまったく引き出せなかったことに比べれば、大きく前進したのではないでしょうか。

口座凍結を解除する場合の注意点

口座凍結を放置すると払い戻し請求ができなくなる

名義人が亡くなって、銀行口座が凍結してしまった場合は、なるべく早く凍結を解除するように努力しましょう。もちろん、遺産分割協議がなかなかうまくいかないこともあるでしょう。しかし、預貯金口座の払戻請求権には時効があります。銀行の場合には5年、信用金庫などは10年となっていて、それが過ぎれば国のお金になってしまいます。遺産分割も、ほどほどのところで妥協が必要ということでしょうか。

資産の凍結リスクを避けるなら対策が必要

遺言書やエンディングノートなどの相続対策

名義人が亡くなったときに、銀行口座が凍結されてしまうのはある程度仕方のないことです。しかし、凍結されたとしても、すぐに解除できるような準備をする必要があります。具体的には、遺産相続をスムーズに進めることです。遺言やエンディングノートなどを準備して、遺産の分割を明確にしておけば親族間の争いも防止できて、口座の凍結解除もスムーズにいくはずです。

家族信託を利用する

遺言などのほかにも、家族信託を利用するのも良い方法です。しかし、その場合には預貯金を引き出して、現金で管理するのが一般的といわれています。やはり、いくら信託契約があっても、銀行側は信託口座とは認めない場合が多いようです。一部では「信託口口座」という信託口座をつくれる金融機関もあるようですが、まだ一般的ではありません。家族信託では、現金で管理して、引き落としなど最低限の金額を入れる口座をつくっておくのが現実的なようです。

2019年7月の改正民法施行により変わったこと

家族に不幸があった際、葬儀にまとまったお金が必要になりますが、従来は口座凍結により個人の口座から必要な金額を引き出すことができませんでした。

しかし、令和元年(2019年)に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立。昭和55年以来の三直利により、現在の社会情勢によりあった内容へと変わりました。

これまで金融機関は払戻しに応じなかった理由

本来、亡くなった方の預貯金は口座が凍結され、相続による名義変更をしないと一切払戻しができないのが原則でした。たとえ相続人が自分の法定相続分の範囲内でなら正当な権利ではないかと相続分以下の額の払戻しを請求しても、金融機関はまず応じません。「法定相続分」は、あくまでも遺言がないとき、分割協議や調停などの目安とされる指針を法が定めたものに過ぎず、権利として当然に認められている訳ではないからです。したがって、払い戻しに応じて後に裁判沙汰になり、責任を追及される可能性は金融機関にとって避けなければならないのです。

仮払い制度の導入

金融機関が口座を凍結するのは、相続人にとっても誰かが勝手に引き出す心配がなくなるため本来良いことです。しかし一方で、相続人が生活費からローン支払いまですべてを故人の口座で賄っていた場合、残された家族の生活はたちまち脅かされてしまいます。生活どころか故人の入院費、葬儀代も支払えないかもしれません。 そこで、残された相続人の当座の生活を守るため、平成30年7月に相続法が改正され、預貯金の仮払い制度ができました。(運用は令和元年7月から)

仮払いの上限は決まっている

仮払い制度はその名のとおり、あくまでもとりあえず必要なお金を工面させ、相続人の生活を担保する趣旨の制度なので、当然ながら相続人が自分の法定相続分を引き出すことはできません。額の上限が決められているのです。

実際に払戻しを受けられる額の計算方法は、

相続開始時の預貯金債権の額×1/3×払戻しを受ける相続人の法定相続分=払戻し額となります。

例えば預金1200万円、法定相続人が配偶者と子が2人とすれば、子の一人が受けられる額は、1200万円×1/3×1/4(子の法定相続割合)=100万円となります。 更に、上記の計算とは別に、仮払い額には「150万円まで」という上限があるので、仮に上記の場合で口座に3000万円あったとしても、計算式で出てくる250万円ではなく、150万円しか受け取れません。それは相続人の当座の生活を守るための制度だからであり、遺産分割とは違うからです。ただしもちろん仮払いで受け取った額は、分割協議において、既に受け取った財産として計算されます。

多額が必要な場合は家庭裁判所に

制度導入までも、遺産分割までにどうしてもまとまったお金が必要な相続人は、家庭裁判所に仮分割の保全処分を申立てて認められれば、単独で遺産の支払いを受けることは可能でした。ただある程度要件が厳しいことや時間がかかることから、なかなか気軽に利用されてこなかったことは否めません。今回の仮払い制度により、裁判所の判断が不要となったことで、これからは積極的に利用されることが期待されます。もちろん仮分割の保全申立ては引続き利用できますが、今後は仮払いの上限を超えた額が急ぎ必要な場合などに限られてくるでしょう。

仮払いを受けるためには

上記の上限額以下の引き出しであれば、特別な手続きは不要です。相続人は、自分が故人の法定相続人であること、及び自分の法定相続分を証明する書類を金融機関に持って行き、仮払いを請求すればよいのです。とはいえ、法定相続分の証明には故人の出生から死亡までの全戸籍(除籍)謄本が要るので、場合によっては時間がかかるかもしれず、少なくとも葬儀までには引き出せないことは十分に考えられます。 また、金融機関に提出する書類には相続人の実印での捺印が求められることになります。もし実印を作っていなかった場合は登録手続きも行わなければなりません。

問題点

上限額は一つの金融機関に対して定められているため、複数の金融機関に口座があると、それぞれから最高150万円を引き出せ、かなりの額を手にすることも理論上可能です。となると、制度の趣旨がどこまで活かされるか、今の時点ではやや不安です。また、前記のとおり、故人が生前転籍を繰り返していたような場合、謄本を整えるだけで時間がかかり、「当座」の費用を担うための実効性について不安が生じます。今後、実際の活用のされ方を把握した、更なる制度のブラッシュアップを期待したいところです。

参考サイト

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