家族信託は解除できる?
結論から述べると、家族信託は契約途中でも解除できます。委託者と受託者の間で信託契約を結んだことによって開始された家族信託が終了するのは、委託者と受託者の間で合意がある時、または信託行為で定めた事由が発生した時の2パターンです。家族信託を解除するには、どちらかの事由を必ず満たす必要があります。
合意があれば家族信託の解除は簡単
家族信託を解除する方法として最も簡単なのは、委託者と受託者の間で合意を結ぶこと。しかしこの方法の問題点は委託者に合意ができない可能性があることでしょう。
家族信託解除の合意ができない場合
委託者である高齢の親が認知症を患っている場合、家族信託の終了に合意できず、解除に至らない可能性があります。このケースに陥ってしまった場合の最終手段は裁判所への申立を行うことです。家族信託を終了する事情が正当であると認められれば、裁判所から信託契約の終了が命ぜられます。
上記のようなケースを回避するためには、あらかじめ信託内容の終了事由を定めておくのが有効です。例えば〇〇が死亡した時や○年○月○日など具体的な事由を定めておくことで、速やかに家族信託を解除できます。
信託が終了する主な事由
信託が終了する主な事由には以下のものがあります。
- 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
- 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。
- 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。
- 受託者が費用等の償還又は費用の前払を受けることができず、信託を終了させたとき。
- 信託の併合がされたとき。
- 信託の終了を命ずる裁判があったとき。
- 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
- 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、信託契約の解除がされたとき。
- 信託行為において定めた事由が生じたとき。
上記の信託の終了事由の中でもよく適用されているのは、信託目的を達成した時、信託の目的を達成できなくなった時、信託内容に定めた終了事由が発生した時の3つです。
例えば、受益者への給付が満20歳に達するまでという目的であった場合や、受益者に対して全ての信託財産を給付し終えた時などが該当します。
またよくあるのは、受益者の死亡までと終了事由を定めているケースです。跡継ぎ遺贈型受益者連続信託の場合は、信託開始から30年以降に第二受益者が受益権を取得すると、新たな受益者が死亡するまで信託契約は存続されます。
家族信託が意図せず修了した場合はどうなる?
委託者または受託者の死亡により、家族信託が意図せずに終了してしまった場合、問題となるのは信託財産が誰のものになるのかという点です。
家族信託が終了すると信託財産から所有権財産へと戻ります。このときに信託契約書の内容に「残余財産の帰属先指定」の条項があれば、内容に従って財産の帰属先が決定されます。帰属先の指定がない場合や指定された人物が権利を放棄した場合には、委託者に権利が戻る、または委託者の相続人が帰属権利者です。どの該当者もいない場合には、最終的に「精算受託者」に帰属します。
家族信託の終了時には信託財産の受益者が必ず残余財産をもらえるわけではありません。例えば、委託者が死亡して家族信託が終了し、残余財産の指定がされていない場合、受託者が単独相続人であれば残余財産は受託者に帰属します。しかし、受託者を含め複数の相続人が存在していた場合には、残余財産の分割協議が必要になります。受託者が相続人でなかった場合には、信託終了とともに受託者の財産権は失われてしまいます。
家族信託における残余財産の帰属先指定の条項は需要なものです。家族信託が意図せず終了した場合のトラブルを避けるためにも、予め帰属先の指定を行っておく必要があります。
信託財産の相続放棄は可能?
信託財産の相続を放棄することは可能です。また、信託財産と同じように、信託財産の受益権も放棄が可能。受益権を放棄すると、受益者は受益権を所有していなかったことになり、第二受益者や相続人に受益権が引き継がれます。受益権を放棄する場合には、受益権に関する条項をあらかじめ定めておく必要があります。条項を定めることで受益権の相続時に受託者に放棄の意思を示せば、受益権を放棄することが可能です。
参考サイト
- 宮田総合法務事務所:家族信託の始まりと終わり(信託の開始時期と終了事由)
- 宮田総合法務事務所:家族信託が意図せず終了した場合どうなりますか?
- 税理士法人フォーエイト:家族信託の契約手続きの流れや解除方法、不動産管理について
- 相続弁護士本橋総合法律事務所:どのような場合に信託が終了するのでしょうか
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