成年後見制度との比較
このページでは、家族信託と成年後見制度を比較しています。
家族信託と成年後見制度を比較
認知症は、深刻な加齢現象として社会問題化しています。その介護を家族で行うことが困難となった場合、施設への入居が検討されますが、費用は少なくありません。家族の間では「本人の口座に残っている預金を使用し、入居費用に充てよう」などの対策案が挙げられるでしょう。そこでひとつの問題に直面します。金融機関は「本人が認知症であると認められた場合、預貯金を払い戻さなくなる」のです。
家族がキャッシュカードと暗証番号を預かっていれば、お金を下ろすことはできますが「本人はキャッシュカードがどこにあるのか憶えていないし、暗証番号も忘れている」という場合、銀行に「どうすれば良いでしょう」と、相談することになります。すると銀行は「成年後見制度を利用なさっては…」と提案してくるでしょう。
成年後見制度とは
認知症などで判断能力が衰えている人のために、司法書士や弁護士など専門職または親族などが、本人に代わって財産管理や契約行為を行うための制度(※)。その内容には、身上監護も含まれる。
本人があらかじめ後見人を依頼しておく『任意後見制度』と、家庭裁判所が後見人を選任する『法定後見制度』がある。
(※)近年は職業後見人が約8割、親族後見人が約2割となっている。
成年後見制度は2000年から施工された制度ですが、申し込んだ人の間からは多くの不満が挙がっています。以下のようなデメリットがあるからです。
後見人ができない行為・相続税対策
後見人制度を利用した場合、後見人が本人に代わって相続税対策を行うことはできません。後見制度は本人の「分身」として身分行為(婚姻や遺言など)以外の権限を持ちます。
しかし、後見人制度では「本人にメリットがないことは後見人として行えない」というのが原則です。生前贈与を行うと本人の財産が減ってしまうので、本人にはメリットがありません。そして、メリットを享受するのは課税される相続税が減る被相続人です。相続税対策は本人亡き後に残された相続人のために行われるものなので、本人には全くメリットがなく、後見人では行えないのです。
任意後見が効力を発揮するのは認知症になってから
任意後見では自分が信頼できる人物を選出して、財産管理を任せられますが、制度の効力がスタートするのは認知症など判断能力の低下に陥った時からです。任意後見のスタートするには、本人または親族が家庭裁判所にて後見監督人の選任の申立を行う必要があります。後見監督人が選任されて初めて、貢献契約の効力が発揮されるのです。
任意後見をスタートするための条件は、認知症などで本人の判断能力が低下していることです。本人が病気で体を動かせない状態であっても、判断能力が低下していなければ任意後見契約をスタートすることはできません。
成年後見制度のデメリットまとめ
- 本人の財産に、家族は一切触れられなくなる(職業後見人の場合)。
- 本人の死亡まで途中解約ができない。
- 費用が月20,000~60,000円程度かかる(家庭裁判所の決定により異なる)。
- 住宅などの処分には、家庭裁判所の許可が必要。
- 身上監護業務と言っても、数ヶ月に一度介護施設を訪れる程度(職業後見人の場合)。
成年後見制度は、認知症などを患い、判断能力が衰えている人の財産を悪用させないために、有用な制度となるはずでした。
しかし近年は「介護費用がどうしても必要なのだが、本人の銀行口座からお金が下ろせなくて、成年後見制度を利用せざるを得なくなった」という申請理由が増加中。金融機関は話し合いに応じる態度すら見せず「成年後見制度をご利用ください」の一点張りなので、不満が生じるのも当然と言えます。
成年後見制度の施行から6年後に登場した家族信託には、そのデメリットを補う、以下のメリットがあります。
成年後見制度と比較した際に感じられる、家族信託のメリットまとめ
- 総財産の中から「信託に充てる財産」を、委託者が自由に設定できる。
- 受託者の任期は自由に設定可能。
- 受託者は信託財産に不動産が含まれていたとしても、自由に運用/処分可能。
- 受託者への費用が不要(契約の段階で月額などを設定することも可能)。
家族信託を検討する場合のポイント
成年後見制度と家族信託を比較すると、家族信託がより自由な財産管理法であることがわかります。
「でも親族を後見人にすれば、成年後見制度のデメリットも解消できるのでは…?」という意見も挙がりそうですが、悲しいことに近年、親族後見人による不正トラブルは頻発しています。
家族信託でも同様な心配はあるのですが、信託に充てる財産の範囲は委託者が自由に設定できるので、安心感が高めです。
認知症対策のひとつとして、あらかじめ家族信託を検討しておくことをおすすめします。
とは言え家族信託は、まだ歴史の浅い財産管理法です。まずは弁護士や司法書士などの専門家に、相談するところから始めましょう。
家族信託の取り扱い実績が豊富な専門家は少ないので、依頼先は慎重に選びたいもの。本サイトでは、家族信託の専門家の選び方・見極め方についてページを設けていますので、内容をご確認ください。
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