家族信託の委託者が死亡した場合の契約はどうなるの?
家族信託は当事者が認知症や重い病気を患い寝たきりになって意思の疎通が難しくなった場合などに、財産管理を家族や信頼できる人に任せられるとても有効な契約です。しかし、委託者が死亡した場合、管理を依頼していた財産はどうなるのでしょうか?委託者が死亡した場合の家族信託の注意点について紹介します。
信託の内容によって対応が異なる
委託者が死亡した場合、信託内容によって対応が異なってきます。信託契約には、信託契約を取り交わすことで信託が開始される「契約信託」と死亡によって遺言で信託契約を開始する「遺言信託」があります。それぞれの例について見ていきましょう。
契約信託について
契約書に委託者が死亡したときの定めがないときには、相続によって委任者の地位や権利は相続人に相続されます。相続人が複数の場合には遺産分割協議で話し合うことになります。
遺言信託について
遺言信託では、委託者が死亡した場合特段の定めが無い限り、委託者の地位や権利は相続されません。委託者がいないまま信託契約が開始されることになります。現在の法律では、遺言信託で受益者と遺言者(委託者)の「相続人」が必ずしも同じではありません。そのため、委託者と受益者の地位を受け継いだ受益者以外の相続人との複雑な法律問題などを回避するために相続できなくなっています。
委託者死亡の対応を明記しておく
契約信託については、委託者が死亡したときの対応を必ず明記しておきましょう。死亡した後に子どもや親族が遺産相続でもめてしまう原因にもなりかねません。
受託者・受益者がなくなった場合はどうなるの?
受託者が亡くなった場合
もし、受託者が亡くなった場合にはどうなるのでしょうか。契約の定めによって新しい受託者を選ぶ必要があります。契約に選定する方法が書かれていなければ、委託者と受託者の話し合いによって選任されることになります。また、裁判所に選任をしてもらうことも可能です。ただし、1年間経過しても選任されない場合には信託契約は終了してしまうので注意しましょう。
信託業務が長期にわたると、受託者が死亡したり、認知症や寝たきりになったりして業務の遂行ができなくなることが考えられます。このような場合には信託はどうなるのでしょうか。
受託者が不在、あるいは業務不可能となると受益者の生活に当然差し障りが出てくるので、早急に新しい受託者を選ぶ必要があります。
契約であらかじめ「受託者死亡の場合は受益者が指定する」などと決めておくこともできますが、選定方法が書かれていなければ、受託者の選定には委託者と受益者双方の合意が必要となります。また、既に委託者も死亡していた場合は信託法の規定で受益者が新たな受託者を指定することになっています。
受託者を新たに選定する際の注意点
気をつけておかなければならないのは、受託者の死亡から1年間経過しても新たな受託者が選任されない場合には、当該信託契約自体が終了してしまうということです。
通常、受益者が認知症や疾病などの理由で選定の意思表示ができないときには、他の親族などが家庭裁判所に新たな受託者の選定を申し立てることができます。しかし事情を把握している親族などがいない場合はそれもできずに、契約終了となる恐れがあります。
受託者死亡のリスクヘッジ
このような事態を避けるのに最も効果的な方法は、契約で「第二受託者」を指定しておくことです。このとき、信託がかなり長期間になる可能性がある場合には、第二受託者に法人を指定しておくのも一つの考えです。他の家族や親族を指定しても、長期にわたる間の事情で受託者になれない可能性がありますが、法人であれば複数人で入れ替わったり引き継いだりしながらずっと継続できるので、確実に受託できます。ただし、株式会社など営利を目的とする法人は、信託業法に抵触する疑いがあるので受託者になれません。そこで一般社団法人やNPO法人などが受託することが考えられますが、どのような形態の法人であれば可能であるかについての詳細は、家族信託に詳しい専門家に尋ねてみましょう。
信託契約を考えるときには様々な事態を想定し、それらに対処できる内容にしておくことが大切です。
受益者が亡くなった場合
受益者が死亡した場合には、受益者の相続人が受益者となります。契約書の中に特別な定めがなければ、通常の相続財産と同じく、遺産分割協議の対象となります。あらかじめ、受益者が遺言によって相続人を選んでおくことも可能です。
さまざまなケースを想定しておく
世の中は何が起こるか分かりません。例えば委託者である親よりも先に、受託者である子どもが亡くなってしまう可能性もあるでしょう。
もしものときに備えて、受託者が死亡した場合次の受託者を決めておく、遺言信託をする場合次の委託者をしっかり指定しておくなどが必要です。さまざまなケースを考えた契約を結ぶことが大切。しかし契約内容や考えられるケースについて家族だけで話し合うには限界があります。
家族にとって有益な信託契約を結ぶためにも、多くの家族信託のケースに対応してきた、専門家の知識や知恵を借りた方がいいでしょう。
参考サイト
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