家族信託と生命保険信託の違い
近年注目を集めている生命保険信託。しかし2020年にプルデンシャル生命が取り扱いを始めたばかりの新しい制度のため、2020年現在は一部の保険会社・信託銀行でしかおこなわれていません。そのため、生命保険信託についてどのようなものなのかご存知の方も少ないでしょう。ここでは、生命保険と家族信託との違いやメリットなどについて解説していきます。
生命保険の管理について不安がある人は、ぜひ参考にしてみてください。
家族信託と生命保険の共通点
生命保険の目的は、大きく分けて相続税対策における保険金の非課税財産の活用、相続税の納税資金確保、遺留分対策にわけられるでしょう。遺留分対策とは、保険金相当額の財産を遺留分減殺請求対象財産から外すことです。
このように生命保険は、残された家族や大切な人の生活を守るために存在する制度であると言うことができるでしょう。
家族信託は、さまざまなケースに合わせて財産管理ができる制度ですが、大きな目的のひとつとして資産の継承者の指定があります。
家族信託では、財産管理を生前のうちに家族に託すことで、亡くなった後の財産の結末を指定しておくことが可能。そのため、遺言の代用としても活用できます。
死後に財産を家族や大切な人に残すための意図を示すための仕組みという点では、生命保険も家族信託もよく似ているでしょう。
家族信託と生命保険の違い
家族信託と生命保険の大きな違いは、受取人として指定できる人物が挙げられます。
一般的な生命保険契約の場合、保険金の受取人には、妻や子、親・兄弟姉妹などの家族が指定されます。一方で家族信託による生命保険信託では、家族以外の人物を保険金の受取人に指定することが可能です。たとえば、保険金の受取人として指定した子どもに障害や疾病などがあり、判断能力が低いとされた場合、振り込まれた保険金の管理は難しいでしょう。その場合、受け取った保険金は身内の親族が代わりに管理しますが、使い込まれたり意図しない用途に使われたりするなどのリスクもあります。
生命保険信託であれば、保険金の使用目的を指定することで信託銀行が契約通りに使用されているかチェックすることが可能です。生命保険の場合、どのような目的で使われたか分からないのがデメリットですが、生命保険信託では使用用途を指定したうえで第3者の監視もされるため、もしもの場合にも自分の希望通りに資産を使うための備えとして適しています。
生命保険信託のメリット
生命保険を分割して渡せる
給付する金額を毎月一定額に分割することができる点が、生命保険信託の大きなメリットです。そのため、毎月必要な生活費やニーズに合わせて給付額を変更できます。
通常の生命保険では一括で支払われるため、使い過ぎや法定代理人による使い込みを心配するケースもあるでしょう。このようなトラブルを防ぐために、生命保険信託の活用が有効です。
生命保険信託では、信託銀行や信託会社が一時的に受託者として生命保険を受け取ります。その後、信託契約書に記載した通りの金額を未成年者の子どもを受託者として、毎月一定金額を生活費として分割して渡すことが可能です。生命保険信託は、主に障害のある子どもや浪費癖のある子どもに保険金を分割して渡したいときに最適でしょう。
受取人の指定ができる
受益者連続信託の制度を活用することで、受益者を次々に指定できます。たとえば、最初の受益者である妻に毎月一定額を給付していき、妻が亡くなった場合は次の受給者である子どもに生活費を渡すことが可能です。
また、受給者は家族以外の人物も指定できます。障害のある子どもを第一受給者として指定し、亡くなった後は入所していた施設に寄付するなどの活用方法も可能です。
子どもがいない夫婦の場合は、第一受給者に配偶者を指定し、死後は第二受託者として自分の親族を指定できます。ケース次第では、第二受給者以降の第三・第四受給者まで指定することが可能です。
このように受取人を数次に渡って指定することで、残された家族の生活を長い間守れます。何世代も先まで財産管理の仕組みを組めるのが、生命保険信託の大きなメリットといえます。
まとめ
生命保険信託は、いつ誰にどのように保険金を渡すのか細かく設定できるのが大きなメリットです。ただし、信託契約にかかるコストが必要になります。費用は保険会社により異なるため、コストに見合うメリットを受けられるか十分に検討することが重要です。
生命保険信託を取り扱っている保険会社は、まだ少ないですが少しづつ増えています。今後より活用しやすい制度になることが期待できるでしょう。
またもしもの際に備えるための財産管理には、遺言書や成年後見制度もあります。その中でも家族信託は自由度が高く、「自分の希望に沿った信託を行いたい」という方に最適。認知症に備える資産運用方法としても注目されています。
参考サイト
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