家族信託を活用する際の融資について
ここでは、信託財産のひとつ「不動産」の活用に関して、融資が必要な場合について解説します。
融資を受ける方法は2つ
家族信託は、成年後見制度と比較されることがありますが、それぞれに出来ること出来ないことを知っておくことが大切です。例えば成年後見では財産管理と共に身上監護ができますが、信託では財産管理のみです。
一方、信託では管理している賃貸不動産の改修をするために、金融機関などから融資を受けることができますが、成年後見人にその権限はありません。成年後見は本人の財産を「守る」ための制度であり、相続税対策のための積極的な運用は行うことができないからです。しかし、あくまでも受託者は委託者の財産を管理していく責任を負っているので、融資を受けるか、またどのように受けるかについては慎重に取り組む必要があります。
信託活用のための融資には信託内借入と信託外借入の2つの方法があります。
信託内借入
受託者が信託契約で定められた借入権限を根拠に、融資を受けるのが信託内借入です。受託者自身が当事者となり金融機関と直接交渉して融資を受けますが、借り入れた金銭そのものは信託財産の中に組み込まれます。受託者は既に管理を任されている金銭と、この借入金を活用し、既存の賃貸不動産の改修、あるいは一から収益物件を建設するなどの手続全般を行うのです。
返済も信託財産から行います。改修することで賃貸不動産の価値が上がり、家賃収入が増える、新たな収益物件建築での収入が加わるなどしますが、これらの収入は当然信託財産となるので、計画的返済が可能となるのです。
信託外借入
受託者ではなく委託者本人が金融機関から融資を受ける方法です。金銭消費貸借契約の当事者は委託者と金融機関であり、借入金は信託財産とは無関係で、委託者の金銭となります。この方法で新たに収益物件を建てた場合、建物の名義は一義的に委託者となるため、受託者が管理するためには追加信託が必要となります。ただし、借入金は委託者が返済するため、家賃収入で返済していきたい場合は、受託者が返済相当額を委託者に送金。一般的に親子間家族信託の場合、親は委託者兼受益者であることが多いので、例えば信託配当の形でスムーズに送金できるでしょう。
信託外借入は委託者に十分な判断能力がないとできません。例えば子との信託契約が開始したものの、親がまだまだ元気で、自ら積極的に不動産改修や物件新築を計画する場合に利用することが考えられます。
相続時の扱いの違い
信託外借入の場合、親の債務が残っていれば当然に子に相続されるので、引き続き子が返済を行います。
一方信託内借入の場合は、やや複雑です。委託者である親の死亡と同時に信託契約は終了するので、その後、残余債務を含む信託財産を誰がどのように引き継ぐかについて、検討が必要となるからです。また、相続税の計算上の債務控除への借入金の活用についても考えなければなりません。そこまで踏み込んで信託契約をしておくか、借入時に相談するか、いずれにしても信託の専門家と打ち合わせしておくべきでしょう。
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