親孝行のための「家族信託」活用事例&実践ガイド
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家族信託による株式の信託

家族信託で信託できる株式と信託できない株式

非上場株式

中小企業の非上場株式に関しては家族信託の事例が多数存在しています。中小企業の社長が50%以上の株式を所有しているとすると、社長が過半数を超える議決権を持っていることになります。仮に、この状態で社長が認知症を患ってしまったら、会社はどうなるのでしょうか?もちろん過半数以上の議決権を持つ社長に判断能力が認められず、株主総会で決定すべき事項が決められなくなってしまいます。

多くの中小企業では株式の大半を社長が所有しているケースが多く見られます。このようなリスクを避けるために、後継者に株式を生前贈与するという方法もありますが、多額の贈与税が発生する可能性を避けられません。

上場株式

認知症に備える資産管理のうち、上場株式を信託財産としたいという希望は少なくありません。理論上、信託することは可能です。しかし、上場株式の信託に対応している証券会社が少ないのが、現状でしょう。実務上で、上場株式を家族信託の信託財産とするケースはほとんどありません

一部の証券会社では、信託口口座の開設に対応していますが、株式の性質上、財産が目減りしてしまう可能性を考慮しておかなければならないのです。財産の目減りは受託者の善管注意義務違反にあたる可能性があるので、委託者と受託者であらかじめ株式の運用方法に関してよく話し合っておく必要もあります。

現時点では上場株式の信託に対応している証券会社はほとんどありませんが、将来的には増加が見込まれています。上場株式をスムーズに信託できる仕組み作りが成されていないことが課題でしょう。

経営リスクを回避するための株式の家族信託

経営リスクの回避、そして贈与税対策として家族信託によって非上場株式を信託財産とする方法があります。大株主の判断能力低下による株主総会の開催不能対策としては、後継者に株式を生前贈与する方法が考えられます。しかしこの方法の場合、会社の業績が上がり株価が高騰すると、多額の贈与税が発生してしまうのがデメリットです。

このデメリットを解消するためには家族信託を利用するのがおすすめです。現金や不動産などの財産と同じように、株式の名義は委託者である社長から受託者である後継者へと変更されます。家族信託では受託者に信託財産の管理・運用を行う権利があるので、議決権の行使は受託者が行います。非上場株式を譲渡する場合には、株主総会や取締役会の承認を受ける必要がある点だけ注意が必要です。

認知症対策として、株式の信託を行ったのはいいですが、このままでは現社長の議決権がなくなってしまいます。そこで重要になるのが、信託契約者に指図権の行使を条件として記載しておくことです。指図権を行使すれば、委託者は受託者に対して指示を出せます。つまり株式を管理するのは受託者である後継者ですが、議決権を行使する際には委託者の意思が反映されるようになるのです。

家族信託の契約内容に指図権を盛り込むことで、経営リスクを回避しながら、社長が元気なうちは自分の意思を株主総会で反映できるようになります。

家族信託で株式を信託する場合の注意点

議決権行使者の決定

株式の家族信託では、議決権を誰に与えるかが重要です。受託者以外の受益者や現社長を指図権者にして、議決権を行使する権利を与えることもできます。

たとえば、創業者である父が株式のすべてを信託するケースです。指図権者として創業者が議決権を行使し、もし判断能力が衰えるなどした場合は、現社長などに議決権を行使できるような仕組みを作るとよいでしょう。

受託者の指定

株式信託では、指図権者が指定されていない場合、受託者が議決権を行使することができます。

信託した株式が発行済株式総数の過半数を占めているケースでは、受託者が経営権を握ることにもなりかねません。そのため、受託者選びは慎重に行うことが重要です。

契約書の枚数

創業者一族で複数の会社を運営しているケースも多いでしょう。これらの会社の株式をまとめて信託契約をする場合は、契約書の本数をチェックする必要があります。

家族信託の目的や株式の贈与・売買・相続など今後のプランによっては、それぞれの会社ごとに株式信託の契約書を作成する必要があるためです。

信託の設計

株式の信託では、信託の目的によって自己信託か契約信託か、信託の存続期間などの信託の設計が変わります。

信託の目的には、継承者を次の次の代まで指定する受益者連続型や生前に株式を継承し相続税対策をおこなう場合、判断力が低下による凍結対策などがあります。

生前贈与が目的のケースでは、株式が次の継承者へ受け継がれるため、委託者が亡くなることで信託を終了させることも多いでしょう。

自己信託は、生前贈与には活用できますが、認知症対策としては使用できないため注意が必要です。

受益者の変更権

後継者が逝去した場合や後継者として資質に問題がある場合、後継に対して拒否した場合は、実際の後継者と予定していた後継者が異なるケースがあります。当初予定していた後継者に株式を譲渡していた場合、実際の後継者がどのようにて回収するかが問題です。このケースでは、どのような権利で株式を後継予定者に渡すのか指定することがポイントになるでしょう。

通常、所有権によって株式を後継予定者に譲渡するところを、株式信託の受益権によって譲渡する方法です。そのためには、契約書で「受益者指定権」と「受益者変更権」を指定しましょう。

そうすることで、後継者交代と併せて株主の地位も変更することができる対策を立てられます。

遺留分対策の検討

保有している資産の大部分が株式になっている場合、遺留分対策を考えることが必要なケースもあります。

遺留分対策の場合でも、株式信託は有効です。信託受益権に対し遺留分減殺請求がおこなわれることを考えて、事前に対策を立てることもできるでしょう。

株式信託では、複雑な要素が組み合わさっていることが多いため、ひな型通りに作るのではなく、それぞれのケースに当てはめてきちんと作成する必要があります。

そのためには、信頼できる専門家に依頼をして法的に有効な契約書を作成することが重要です。専門家選びのコツやポイントは、下記の記事を参考にしてみてください。

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